RISS(社会科学総合研究機構)とは
「RISS(社会科学総合研究機構)」は、現代社会が直面している危機を、専門分化した社会科学の枠を超えて捉えなおすことを目的とした研究団体です。
私たちは、政治学・経済学・社会学などの実証的研究を尊重しながらも、それらの背後にある「社会のあり方」や「人間の生き方」そのものを問い返す、哲学的な視点を重視しています。個別分野の知見を寄せ集めるのではなく、それらを貫く共通の問題を明らかにしながら現代社会を理解し、それを実践の基礎に据えること――それがRISSの基本的な立場です。
RISSの成り立ちと学問的背景
RISSは、2020年5月1日に、早稲田大学社会科学部教授を長年務めた田村正勝と、その師・難波田春夫の学問を継承・発展させるために、その門下生を中心に設立された一般社団法人です。
田村正勝と難波田春夫により展開された「社会哲学」は、専門分化した社会諸科学の限界を自覚しながら、哲学などの人文知を総合して現代社会の危機を根底から捉えなおす点に特徴があります。
たしかに「学際的」な学問は、すでに多くの大学や研究者たちのあいだで研究が進められています。それらと比較すると、私たちの共通の土台とする「社会哲学」は、実証的な科学による多面的な考察だけではなく、取り上げる社会的課題の背後にある「意味」を考える、哲学的な考察を重視している点に特徴があります。
たとえば、地球環境問題に対する科学的なアプローチは、政治学、経済学、法学、社会学、教育学その他、多様なアプローチがあります。それらのいずれもが重要な研究手法です。しかし、本団体では、そうした科学的なアプローチだけではなく、人間の理性的能力への過信や経済主義に対する反省をふまえた、「人間や社会に対するものの見方や考え方の変更」という哲学的な視座が必要不可欠だと考えています。
もちろん、哲学といってもいろいろな考え方の違いがあります。そして、その考え方の違いが、たとえば自由主義と社会主義の違いのように、大きなイデオロギー対立を生み出してきた長い歴史があります。私たちの団体は、田村正勝や難波田春夫の思想や学問を「共通の参照軸」としています。しかし、両者の思想や学問を教条化することなく、両者への批判的考察も含めて、両者の思想や学問を発展させていきたいと考えています。
RISSの源流となる二人の学者
両者の思想や学問に関しては、その詳細を明らかにしていくことが私たちの団体の目的のひとつです。そのため、ここでは以下、その導入となる両者の経歴を簡単にご紹介します。
まず、難波田春夫は、戦前に東京帝国大学助教授としてベストセラー『国家と経済』(全五巻、1938-1943年、日本評論社刊)を執筆し、自由主義的経済学ともマルクス主義的経済学とも異なる、独自の「日本経済学」を提唱した人物です。その学問の特徴は、日本経済が天皇を中心とした国民共同体に基づくものとする国家主義的思想であり、そのため敗戦後にGHQから公職追放を受けました。その後は、東洋大学や早稲田大学などで教鞭を取りながら、自身の思想を徹底して掘り下げ、やがて「自由と平等という相矛盾するものが実在の共同体において一致している」という、独自の立場(相互律)からの社会哲学を展開しました。
つぎに田村正勝は、難波田春夫が早稲田大学社会科学部で教鞭をとっていたときにその下で学び、難波田の後任として同学部の看板講義「社会科学方法論」を約40年担当した人物です。田村は、難波田の学問と思想の骨格を継承しながらも、現代の市民社会を基礎づけるとともに、人間と自然の関係を問い直す学問へと、難波田の社会哲学を発展させました。
したがって、難波田の国民共同体論と田村の市民社会論という両者の思想を学問的背景とする本団体は、その意味でも、何か特定のイデオロギーを掲げる団体ではありません。むしろ、現代のイデオロギー対立の根拠を明らかにし、それを超える新しい時代を具体的に構想することが、私たちの社会哲学の目標です。
また、田村は「歴代内閣の経済指南番」とも呼ばれた木内信胤(1899-1993)にも寵愛され、木内が主宰した㈶世界経済調査会や、RISSの前身である㈳日本経済復興協会などで長年経済社会分析をおこない、一般向けにも社会や経済に関する正しい見方の普及につとめてきました。そうした功績が認められ、令和3年秋に瑞宝中綬章を受章しましたが、その学問的な業績の意味については、まさにRISSがこれから中心となって明らかにしていく必要があります。
RISSの現在の活動
以上が二人の紹介となりますが、本団体は、この両者の業績をアーカイブして公開すると同時に、その学問の継承と発展を目的に活動しています。思想を保存するだけでなく、生きた思考として開き続けること――それがRISSの基本姿勢です。


